リレーエッセー 第20弾

蔵中進先生を偲んで

本学名誉教授 原田 松三郎 (学7C)

本学名誉教授の蔵中進先生が4月18日にご自宅で急逝されました(享年79歳)。 通夜(21日18時)および葬儀(22日11時)は、布引山の徳光院(禅寺)で厳かにかつ盛大に営まれました。 両日とも百人を越える参列者が有り、それぞれ先生のご遺徳を偲びました。

先生は1962年4月1日に一般教育科目の助教授として採用され、国語国文学を担当し、主として万葉集を講義されました。 先生はまた授業のかたわらご専門である上代文学の研究にも勤しまれ、数々の専門書を公刊されました。 それらが先生の遺影の前に奉奠されていました。

ここでは1976年に出版されました「唐大和上東征伝の研究」についてのみご紹介します。 「唐大和上東征伝」(しばしば「東征伝」と通称される)は、鑑真和上が我が国に仏教を広めるべく、十数年の艱難辛苦の末、渡来して来られた顛末を奈良朝末期の文人である淡海三船(おうみのみふね)が著述したものです。 先生は後にこの研究でご出身の大阪市立大学から博士号を取得されました。

先生の恩師であられた小島憲之博士が同書の序文の中で次のように述べておられます。

(前略)在来より「東征伝」に関する研究、著書論文は十指を下らない。 しかしその殆どは、仏教学史学畑などの見地より考察したものであるー大師そのものの人格がそうさせたのであろうかー。 しかも書かれた「東征伝」の文学的見地に立つ研究は皆無に近い状態である。 (中略)著者は早くよりこの点に着目し、「東征伝」を文献学的に、さらに文学的に捕らえようとする。 (中略)本書の上梓によって長年月に亘るその研究は結子する。 (以下略、新仮名遣いに改める)

先生は図書館長に在任中、図書館の専門職員である司書を養成する司書課程を作られ(二部に設置)、また日本語課程を設置する委員会では中心的働きをされ、後にこれを母体に大学院に発展させました。

早く1966年の大学生協(神戸市外国語大学消費生活協同組合)の創立にも参与され、後に理事長を歴任されました。

学外では本年がその設立20周年に当たる神戸中国帰国者ボランテア協会の神戸市外国語大学日本語学習を助ける会の立ち上げに協力されました。 現在でも多くの中国帰国者一世およびその子孫がユニテイ(地下鉄学園都市駅の近くの大学共同利用施設)の教室で日本語を学んでいます。 最後になりますが、筆者は先生と40年におよぶお付き合いをさせて頂きましたが、そもそもは先生をチーフとする国語科の入学試験の出題・採点業務でご一緒したのがお付き合いの始まりではないかと思います。 その後1973年に本学外国学研究所の総合プロジェクトに長田夏樹先生、蔵中先生と筆者で一つの研究班を作り、頻繁にお会いするようになりました。 この研究会はテーマを変えつつ延々今日まで続いています。

先生は1994年3月31日で本学を定年退職され、武庫川女子大学、神戸学院大学等で引き続き教鞭を執られました。 そしてすべての勤めをお止めになった後は、「晴耕雨読」ではなく、「晴読雨読」であると言われ、実際に実行されました。 ご遺族のお話では亡くなられた時も文献を調べておられるうちに脳内出血で倒れられたそうです。 先生はまさしく学者、研究者の鑑です。

蔵中進先生、40年に亘る学恩に深く感謝致します。 どうか奥様のお傍で安らかにお眠りください。合掌。

2008年4月24日 原田松三郎

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